Ferrule
神経を抜いた歯(失活歯)の被せもの(クラウン)のトラブルはコア(支台築造)と呼ばれる土台からから外れることが多いです。防止策にファイバーポストで治しても効果はありません。原因はフェルール効果がないためです。フェルールとは神経を抜いた歯(失活歯)に被せ物を装着する際に、被せ物の縁よりも上に健康な歯牙部分が高さ2mm(歯槽骨から5mm)、幅1mm、が必要だと考えられています。また無理に治療しても、精密な印象採得(型をとること)を行うことができず、適合の良いクラウン(被せ物)が作れません。その結果は、クラウンと歯の間に不適合な隙間が出来て、そこから虫歯が再発してしまいます。そのためには矯正的挺出(エクストルージョン)や歯冠長延長術(クラウンレングス)などの方法で『フェルール』を確保します。またフェルールを確保することは歯根破折を防ぐ効果もあります。
フェルール効果がない歯
フェルール効果がある歯
今回のケースは前歯をセラミッククラウン(自費治療)で治したが、何度もとれてしまうということで来院しました。
初診時の状態です。フェルールがありません。このままファイバーポスト、セラミッククラウンで治してもまたとれるでしょう。歯根破折する可能性も。
矯正的挺出をおこないます。
そのあと歯冠長延長術をおこないます。
2mmのフェルール効果ができ、ファイバーポストがはいりました。
セラミッククラウンがはいりました。
『フェルール』を獲得することが、『被せ物の安定』には欠くことのできない必須条件です。
歯は「歯槽骨」という骨の中に埋まっていますが、虫歯や歯が割れた部分がこの歯槽骨に埋まっているところまで達してると(C4ともいいます)、治療は出来ません(抜歯になります)。しかし「エクストルージョン」という方法や、「クラウンレングスニング」(歯冠長延長術)という方法で健康な歯の部分を歯肉の上に出すことが出来れば、歯を抜かずに残すことが可能な場合もあります。(症例によっては抜歯になることがありますので、しっかりした診査、診断が大切です。)
エクストルージョンとは、歯肉の下に虫歯や歯が割れている場合に矯正で歯を引っ張り出して、虫歯や歯が割れた部位を歯肉の上に出すことを目的として行ないます。
クラウンレングスニング(歯冠長延長術)とは、歯ぐきや歯槽骨を削ることによって(歯周外科)、虫歯や歯が割れている部分を歯肉の上に出す治療法のことです。
1:歯の根の部分だけが 残っている状態。
2:残った歯に フックのようなものをつけ、
ゆっくりと引っ張りあげていく。
3:歯周組織が修復される
長持ちするクラウン(被せ物)は、歯槽骨から5mm以上の歯質が必要です。