みなさん、こんにちは江俣歯科医院院長、歯周病指導医・インプラント専門医の江俣です。
薬(抗菌薬)の力で歯周病を治療する方法を提案される患者さんが多いみたいです。今回はそのお話をします。
日本歯周病学会の「歯周病患者における抗菌療法の指針」では「抗菌薬を用いた治療方法の多くは確固たる科学的根拠に基いているといえないのが現状である。原因である歯肉縁上縁下のプラークコントロールをすることが歯周治療の根幹であり、すべての治療に優先する。」とあります。
歯周病は感染症ですが、特殊性があります。歯周病菌は歯周ポケットという溝の中に存在していて、体内ではありません。抗生物質が効くのは実質骨や歯肉の部分だけですから腫れている歯肉には良く効くわけです。しかしそれで腫れが引いても、感染源はそのままですから歯周病が治ったわけではありません。表面的に腫れが引いたことを治ったと思い違いしているだけなのです。また歯周病菌はプラークと呼ばれる細菌の”塊(バイオフィルム)”なので、機械的除去(プラークコントロール)が原則です。
当院では抗菌療法を行うときは①歯周膿瘍(急性発作での対処療法)②壊死性歯周疾患(特殊な歯周病)③侵襲性歯周炎の患者さんで基本治療で反応が不良なときです。
効くと言われている薬で治療されている方のお口の中を拝見すると、プラークも歯石も残っていることが多いです。本来やるべき治療を省略し、安易な方向に走ってはいないでしょうか?薬で治ってしまうならその方が楽に決まっていますが、歯周病がなくならないのが現状です。